朝鮮人民の権利踏みにじる政府・司法
朝鮮学校「高校無償化」裁判不当判決


 九月十三日午後二時一〇分、東京地裁において、朝鮮高級学校が高校授業料「無償化」から外されたことを違法として訴えた裁判の判決を、山田裁判長が出した。傍聴希望者は一五〇〇人。二人の弁護士が裁判所前で出した白い紙には「不当判決」「朝高生の声、届かず」と書かれていた。怒りの声、泣き声が起こり、次いで抗議のシュプレヒコールがあがった。しばらくして、歴史的な不当判決を糾弾する演説が始まった。この間絶え間なく、朝高生を中心とした文科省前の抗議活動で歌われてきた『声よ集まれ、歌となれ』のなかの「どれだけ叫べばいいのだろう!」という歌声が響き、まわりにいた大勢の支援者たちも唱和した。
 「原告団の申請を棄却する」「裁判費用は原告側が支払う」というたった三〇秒の不当判決言い渡しだった。
 午後六時三〇分から、日本教育会館一ッ橋ホールで、裁判の報告集会が開かれた。最初に弁護団が判決について報告をおこなった。今日出された判決はあまりにもひどい判決であると、そのひどさに逆に奮い立った、高裁・最高裁で勝利を獲得するまで闘うとの決意表明があった。
 二〇一二年八月、高校授業料無償化法が成立。民主党政権のもとで第三者機関審議を行なうこととなった。審議機関においても朝鮮学校への支給は支持されていた。ところが同年十二月、第二次安倍政権が誕生すると、下村文科相は朝鮮学校を無償化の対象から外す決定をした。その根拠規定としての文部科学省令「規則第一条一項二号ハ」を削除することを決定し、十二月二十八日に記者会見を開き、拉致問題等を理由として朝鮮高校の生徒に対する授業料無償化は認められないことを表明した。政治的・外交的理由での排除は明らかである。さらに原告側は文科省役人尋問を実現させたが、かれらは政治的・外交的理由での対象除外ではないことを証明することはできなかった。しかし裁判所は白を黒と言いくるめて、政治的・外交的理由とは認められないと判断した。原告が求めた規定「ハ」削除の違法性についての裁判所の判断は回避された。
 もう一点は、無償化法のもとでの指定のための手続き問題である。規程一三条には、授業料無償化が就学支援金として学校に支払われたのち生徒に支払う形をとるために、その間の不正流用を防ぐ「法令に基づく適正運用」という規程がある。国は、朝鮮高級学校は「適正運用」していない疑いがある、その理由として朝鮮総聯あるいは朝鮮民主主義人民共和国に支配されている疑いがあるという。その証拠として、国側は公安調査庁の調査記録や『産経新聞』の記事を提出。裁判所は、国の主張を追認し、文科省による裁量権の逸脱は認められないとした。裁判所は、司法判断を放棄したのである。
 報告集会での「当時者発言」では、三人の卒業生とオモニたちの力強い発言があった。愛知・広島の発言に続いて、地裁で勝利判決をかちとった大阪からの発言があった。また、韓国市民団体からの連帯アピールがおこなわれた。主催団体「フォーラム平和・人権・環境」藤本代表は、人権擁護の立場から在日朝鮮人との連帯の必要性をアピールした。「東京朝鮮高校を支援する会」長谷川代表は、この問題において日本人民が連帯して闘うことを行動提起とした。
 ついに日本国憲法破壊が日程にのぼる今日の政治情勢のもと、在日朝鮮人と日本の人民の連帯こそが、未来を切り開く。【阪上みつ子】

(『思想運動』1008号 2017年9月15日号)