金持ちは戦争で儲けている!
アベ「朝鮮国難選挙」のデマを打ち破ろう


「国難」と「朝鮮特需」

 九月二十七日付『毎日新聞』朝刊は「米に『北朝鮮特需』/軍事産業株価が上昇/国防予算急増77兆円」の見出しを掲げ、以下の内容を報じた。
 「米国防産業が『北朝鮮特需』で湧いている。米上院は今月18日、2018会計年度(17年10月~18年9月)の国防予算の大枠を決める国防権限法案を89対9の圧倒的な賛成多数で可決。予算規模は総額約7000億㌦(約77兆円)で、政府案を約600億㌦も上回った」。「このまま法案が成立すれば前年度比で約2割増となり、東西冷戦真っただ中のレーガン政権時代や、第二次世界大戦、イラク戦争などの戦時予算を除けば過去最大の伸び率となる」。トランプは「北朝鮮が7月に2度の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験した後に弾道ミサイル防衛(BMD)予算を『数十億㌦増額する』と発言。……核戦力の更新費用も計上され……30年までに最低でも1兆㌦(約110兆円)以上が必要とされる」。一方「ICBMは国防最大手ボーイングとノースロップ・グラマンの2社、巡航ミサイルはミサイルメーカー最大手レイセオンとロッキード・マーチンの2社がそれぞれ、激しい受注競争を展開……ボーイングの株価はトランプ政権発足後の8か月で60%以上、レイセオンも約25%値上がりした。ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマンも共に18%ずつ上昇して」いる。「北朝鮮の脅威の高まりを受けて、日本の防衛省も来年度予算の概算要求で過去最高の5兆2551億円(17年度当初予算比2・5%増)を計上した」。
 冒頭に長い引用をしたが、それはこの記事が、われわれ労働者階級が基本的に押さえておくべき、今日の世界と日本の政治状況を端的に示していると考えるからだ。すなわち、現代の資本主義は、戦争を最大の好機としてとらえる軍需産業と圧倒的な力を持つ金融資本・独占資本、巨万の富を持つ一握りの金持ちたち、そしてその政治的代理人のトランプや安倍らの際限のない金儲けの欲望によって運営されているということだ。

安倍政権の世界認識

 少し古くなるが、今年の一月に外務省経済局が出した『我が国の経済外交2017』という本がある。その総論「我が国の経済外交の基本戦略」「1、日本を巡る情勢と経済外交」には、「いかなる国であっても、その国力を支えるのは経済である。かつては米国に次いで経済規模世界第二位であった日本経済も、経済統合を進めたEU、急成長を遂げた中国に続くポジションとなっている。1990年には日米で世界GDP40%を占めていたが、2015年には4分の1程度にそのシェアは低下している。世界経済の重心が先進国から新興国にシフトする中で、日本経済のGDPシェアは将来さらなる低下が予想される」とし、世界経済における主要国のGDPシェアの推移の図を示し、一九九〇年は日本一四%、中国二%、米国二六%。二〇一四年は、日本六%、中国一二%、米国二一%。二〇五〇年は日本三%、中国一九%、米国一五%と予測しながら、その後の本論中では、中国に関する記述は皆無と言っていい。特別寄稿者は、岡本行夫、竹中平蔵、船橋洋一、榊原定征、三木谷浩史など、名うての日米同盟至上主義、アベノミクス主義者で固められている。安倍政権とそれを支持する、財界、学界、マスコミは、中朝敵視で日本の「国難」を突破できると夢想しているらしいが、世界の笑い者というほかない。
 こういう前提をおいて九月二十八日の安倍による臨時国会冒頭での衆議院解散強行を検討してみる。

朝鮮敵視攻撃との闘いは最重要な環

 一つの重要なポイントは、今次の総選挙が、朝米間の軍事的緊張が激化し、朝鮮民主主義人民共和国( 朝鮮) の「核・ミサイル」危機がヒステリックに叫ばれるなかで行なわれることである。安倍たちは、まさに今がこの問題を自らの支持率アップと九条改憲につなげる絶好のチャンスと捉えて、選挙戦を通して朝鮮敵視の排外主義的な主張をまき散らし大衆の俗情に訴える卑劣なキャンペーンを繰り広げるにちがいない。
 すでに「北の脅威」を口実にまるで戦時下のような危険な状況がつくりだされている。国は、Jアラート訓練を十月からは毎月一回全国の自治体で行なうよう求めている。戦争法(安保関連法)に基づく自衛隊の新任務が朝鮮半島をにらんだ米海軍の展開と結んで行なわれている。
 四月以降、自衛隊の補給艦が月に一~二回のペースで米イージス艦に給油している事実が判明した。五月には、海自艦船が平時における米海軍艦の防護任務をはじめて実施した。日本の朝鮮への「圧力」は経済的・政治的なレベルから軍事的なものへと拡大している。十月には、米原子力空母ロナルド・レーガンが朝鮮半島に展開し、韓国軍と共同訓練を行なうが、そうした訓練への自衛隊の参加も検討されている。
 ほかにも、米の新型兵器の購入(数基購入するとしているイージス・アショアは一基一〇〇〇億円)、敵基地攻撃論、日本の独自核武装論、非核三原則の「見直し」論の横行等々、「北朝鮮」が相手ならば何でもありの非常に恐るべき状況がつくられている。武器禁輸三原則が踏みにじられ、軍需産業の育成、産軍学協同路線の徹底が、日米で連携して追求されている。
 われわれはこうした朝鮮敵視政策に断固反対する。
 安倍は、九月二十五日の解散を表明する記者会見で、「北朝鮮への対応」を選挙戦の争点の柱の一つとする旨を述べたが、国の借金は一〇〇〇兆円を超える天文学的数字となり、少子高齢化・人口減少は待ったなし、企業の内部留保は四〇〇兆円を超え、国内への投資はいっこうに進まない。年収二〇〇万円以下の非正規労働者は二〇〇〇万人を超え、インフレ二%目標は繰り返し先延ばしされた。中国からは引き離され、朝鮮の科学技術の進歩と防衛体制の強化には「制裁」以外の対応策を持てず、まさに「国難」は安倍の政策そのものにある。

総選挙で保守二大政党づくりの動き

 もう一つは、この間の動きのなかで、ブルジョワ支配体制の強化と改憲をめざす保守二大政党体制づくり、国会から護憲勢力を一掃しようというきわめて危険な流れが急速に形成されつつあることだ。
 新しく誕生した小池都知事率いる新党=希望の党は、改憲を公然と掲げ、戦争法に賛成し、新自由主義政策を積極的に推し進める、紛れもないブルジョワ政党であり、改憲推進政党だ。小池らは、東京・愛知・大阪の三知事で選挙協定を結ぶ構想を打ち出して、日本維新の会との連携に乗り出している。
 そして、民進党の前原は、民進党の実質的な解党→希望の党への合流(実際には全面的な拝跪・屈服、一方的な吸収合併だ)の方針を打ち出し、党の両院議員総会もそれを了承した。この提案は、民進党は公認候補を立てず、衆議院選挙に出馬する党員は、希望の党の公認を得て出るという内容だ。それに対し小池は、安保法や憲法の問題で希望の党の主張と異なる人物は排除するという姿勢を明らかにした。そうなれば戦争法・改憲に反対する人物やこれまで市民運動と連携してきた人物などは公認から外される。
 これは、ここ数年来積み重ねられてきた戦争法や共謀罪に反対する運動の枠組み全体をぶち壊し、国会の場から護憲勢力を駆逐・一掃しようとする支配階級による一種のクーデターにほかならない。そしておそらくこれは前原だけの発案ではあるまい。二大政党体制を志向する勢力がさまざまな形で関与していると推測できる。自由党の小沢も希望の党との連携に走った。
 民進党内では合流路線に反発する動きも表面化し、無所属での出馬を検討する議員も出てきた。日本共産党は、合流決定を「重大な背信行為」と非難し、希望の党との対決姿勢を強めている。社民党も共産党と同じスタンスだ。
 マスメディアは、これらの動きを受けて、今次選挙を「政権選択選挙」と位置付け直し、安倍政権VS希望の党という対立構図を強調しつつ選挙民にどちらかを選択するよう迫っている。今度もまた新たな趣向の劇場型選挙が繰り返されようとしているのだ。
 われわれはこう考える。安倍自民だろうが小池新党だろうが、どちらもブルジョワ支配の維持・強化をめざし、憲法改悪を志向する勢力だ。どちらが勝っても日本の労働者・人民の利益に反する、改憲=戦争国家化を推し進める政権が生まれる。またどちらが政権をにぎっても改憲の課題では両者はかならず連携・共同する。安倍らは希望の党を共に改憲をめざすパートナーと位置付けている。
 安倍政権打倒の闘いは、労働者人民の利益を擁護し改憲を阻止するという明確な主張を堅持し、各職場・地域における大衆運動を基礎に置いた闘いでなければならない。目先の選挙にとらわれて、労働者階級の思想と闘いの原則を踏み外してはならない。
 今次選挙では、日本共産党、社民党、民進党内の合流路線を拒否する護憲派など、憲法改悪にはっきりと反対する候補に票を投じよう!【大山 歩】 (九月二十九日)

(『思想運動』1009号 2017年10月1日号)