神奈川・朝鮮学校交流ツアーに参加して
反日本帝国主義の先頭に立つ生徒たち


 二月十日、朝鮮学校を「知り、学び、ともに考えよう」と呼びかける「第二回 かながわ朝鮮学校交流ツアー」が神奈川朝鮮中高級学校・横浜朝鮮初級学校にて開かれた。朝は初中級部の公開授業、続いて体育館での全体会では午後三時までさまざまな企画が盛りだくさんだった。
 全大会の冒頭、中高級学校の金燦旭校長は、ちょうど前日の平昌オリンピック開会式に触れて朝鮮半島南北合同チームの入場に「少し興奮している」と胸中を明かし「横浜に建学してから七二年、……同胞はもちろん地域の支えがあった……民族学校が地域の誇りと思えるように頑張っていきたい」と今後の民族教育存続の決意を語った。
 続いて佐野通夫氏(こども教育宝仙大学)が日朝関係史の講演をおこなった。その中で、帝国主義日本の敗戦=解放、そして一九四五年ごろから日本各地で相次いで在日朝鮮人の「国語教習所」として始まったことなど朝鮮学校をめぐる歴史を解説し、金校長の挨拶にあった「建学七二年」の意味を強調した。
 そして県内の公立、私立、朝鮮学園の高校生等によるリレートーク、昼食休憩では「オモニ会」によるスープの差し入れ、会場内の各ブースで朝鮮文化の体験、部活動発表でもある児童生徒による民族舞踏や民族楽器の演奏、最後に参加者が小グループに分かれての懇談会と続いた。
 リレートークでは朝鮮学園高校二年の女子生徒が「学校名を明かしづらいときもあったが、理解を広めるためにも今後は明かしていきたい」。また高校三年の男子生徒は横浜駅での補助金再開を訴える著名活動、朝大生が中心となった高校無償化を求める文科省前での「金曜行動」へ参加して「みずから実践しなければ、誰も協力などしてくれない。大変だが、自分の責務だとおもっている」と語った。
 またグループトークでも中学二年生の女子生徒が「自分の民族や血は変えられない、それを誇りに思えるように朝鮮学校の生徒として胸を張って生きていきたい」と語っていた。
 かれらには、無償化除外、補助金停止などかつてない厳しい状況が強いられ、同時に卒業後の進路への不安という圧力にのしかけられている。しかし「日本の学校」に通うことはすなわち、「被抑圧民族としての歴史」の重荷を降ろすことに他ならない。その強いられる葛藤の辛さは幾ばくだろうか。リレートークのテーマは「私たちが私らしく生きるために」だったが、その「自己実現」的雰囲気の枠内にはとうてい収まりはしない、真の学習を通しての自分は偽れない、負けられないとの確信と、実践の中で獲得した率直な思い。それらが口々に語られていて感動した。
 と同時に、いま耳目に触れる多くの運動に最も欠けている自覚が指摘されていると、わたしには思えた。
 例えば職場で「人が足りない」、「働かしてもらっている」のだから仕方がないと「納得」してしまっては声にすらならず何も始まらない。
 「人が足りない」のは人事権を独裁している所有者の責任だ、働く側のせいではない。
 「所有」は何も生産しはしない。そもそもこの社会はすべての必要な労働を全体で荷って成り立っているのだから職場はそこで働く者の物である。そういう自分たちの立場を根本において確認し合い、敵の立場から抜け出す思想がいくらかでも職場に浸透させられなければ声を上げることすらできず、闘いは不可能である。そして、その立場を確信するにはどうしても「実践」が不可欠なのだ。理論も大事だ、歴史も大事だ、思想も不可欠だ、しかしそれらは実践と結びついて、初めて顕れる。絵の描き方をいくら説明されても、ボールの蹴り方を、バットの振り方をいくら口で説明されても、出来るようにはならないのと同じだ。
 助けられるのを待ち、あるいは助ける立場にあると勘違いし、権力や権威にすり寄る姿勢からは、不当な現実を自分たちの課題として、みずからの持ち場で抵抗を試みる姿勢が集団として育つことはない。
 圧政が酷いのはその通りだが問題は、それをどう終わらせるかのはずだ。抑圧者に一人で訴えても何もかえられないだろうが、それに抵抗する自分たちの組織を、その行き方を変えることは出来る。圧政自体は抑圧者が行なうことだが、それが続くのはわれわれのせいなのだ。……とかれら中高生が先頭に立って呼びかけているようにわたしには聞こえた。
 二〇一二年十二月安倍は首相に返り咲き、真っ先に朝鮮学校を「高校無償化」から排除した。それに倣うように自治体による補助金停止が相次いだ。ここ神奈川県でも二〇一三年度から「運営補助金」が停止され、その後に「子どもたちへの直接の補助」という形でやっと残せたと思った補助金すらも、一六年度から停止され来年度予算でも「見送る」ことが決められているという。しかしいまだに、この政権を半数近くが支持しているのが日本人民の現状である。日本の労働者、人民は、この現実を恥として闘い、朝鮮学校と連帯しよう。【藤原 晃・神奈川 教育労働者】

(『思想運動』1016号 2018年2月15日号