参院選での参政党急伸の危険性
ファシズム復活のあらゆる策動と対決を!

7月20日の参議院選挙では、自公が大きく議席を減らし、先の衆院選に続き与党が過半数割れとなった。背景には、長期にわたる日本経済の停滞のなかで進行した人民の困窮化、格差の拡大、ここ1、2年の物価高騰による急激な生活破壊、将来への不安の高まり、加えて裏金問題の暴露があり、こうした状況をなんら改善できない既存の政治勢力(与党だけでなく既成の野党も)に対する人びとの不満・不信の増幅があった。しかし、与野党逆転、多党化(多極化)といっても、伸張したのは、自公政権の補完勢力の国民民主党と新興の極右・ファッショ勢力参政党(2党は比例得票数で立憲を超え自民に次ぐ2位と3位)であり、この変化は非常に危険な動きと見なくてはならない。
与野党の別なく全体として反人民的・反労働者的勢力、壊憲と戦争推進の勢力が力を増大させた。とりわけ、参政党の急伸は、戦後日本の政治史のうえでもきわめて重大な事態である。第一に、日本国憲法の3原則(国民主権、基本的人権、平和主義)を真っ向から否定する政治勢力が国政の舞台に大きく進出したという意味においてである。参政党が発表した「新日本憲法構想案」では、主権は国家が持つとされ、国民主権の記述はなし、天皇は元首と位置づけられる、国民の要件として「日本人を大切にする心」が求められ、国防の義務が課せられる、一方で国民の基本的人権に関わる規定は一切ない、憲法(近代憲法)の体をまったく成していない驚くべき代物だ。この党が行なってきた、「西田発言」擁護の歴史修正主義的主張、露骨な反共攻撃、夫婦別姓反対の主張、女性や高齢者、性的少数者への差別発言、そして外国人敵視の排外主義的言動等に、日本国憲法破壊=極反動の本質が現われている。
第二に、この党は、同じ反共でも大衆を惹きつける戦略の高さの点で旧来の右翼とは質的に異なる危険性をもつ。詳しくは、今号6・7面掲載の〈思想運動〉総会・国内情勢報告を参照してほしいが、国際的にみると欧米先進資本主義諸国で影響力を急速に拡大させた右派ポピュリズム運動(トランプのMAGA、ドイツのための選択肢、仏の国民連合等)と共通の指向性と政策(外国人排斥や減税、金融資本攻撃)をもち、また歴史的にはナチスが権力を獲得していったのと同じ手法がもちいられている。参政党は明らかにこれらの経験から権力掌握にむけ人心を収攬する術を習得し実践している。
第三に、この党は、BRICS等の新興諸国の台頭に対する西側帝国主義の巻き返し戦略の核心=中国包囲網づくりに忠実に従ってみずからの政策を展開している。種々の方法で外国人への排外主義的宣伝を繰り返すが、そのおもな矛先は中国(人)にむけられている。経済・軍事の政策に貫かれているのも中国を主要敵とする考え方だ。
純然たるファシスト的本性を有し国際帝国主義の先兵としての任務を担う勢力が地方政治のみならず国政の場でも大きな地歩を築いた。参議院で15議席を確保した結果、参政党が常任委員長のポストを得られる公算が強くなった。また単独での法案提出が可能となり、代表の神谷は7月22日の記者会見で秋の臨時国会にスパイ防止法案の提出を目指す考えを明らかにした。少数与党という不安定な国会情勢のなかで、今後参政党がさまざまな場面でキャスティングボードを握り、日本の政治全体をより反動的な方向に動かしていく危険性が増している。すでに選挙前にも参政党に引っ張られるかたちで外国人への排外主義的政策を各党が競い合って提案する異常な状況が現出した。参政党と自民党右派(高市や旧安倍派)との連携、連立政権の形成といった展開も考えられよう。
こうした動きに抗う闘いが始まっている。移住連などが呼びかけた「排外主義の煽動に反対するNGO緊急共同声明」には短期間で500を超える団体が賛同した。東京東部労組は、参院選で排外主義を扇動する政党が大きく伸張した結果を踏まえ、7月22日、緊急の駅頭情宣を実施、「外国人差別を許すな! 労働者人民は排外主義反対の声をともに上げよう」と訴えた。また参政党が批判報道を続ける神奈川新聞の石橋記者を定例会見から排除した問題をめぐり、新聞労連は7月25日の定期大会で参政党の対応を厳しく非難する抗議文を採択した。
日独伊ファシズム打倒から80年、われわれはこれらの闘いに連帯し、ファシズム復活と戦争に突き進むあらゆる策動と対決しよう!

【大山歩
(『思想運動』1115号 2025年8月1日号)