頻発する中国人襲撃事件
中国敵視の排外主義と闘おう!
先の参議院選挙にむけ、参政党が先頭に立って外国人、とりわけ中国人に対する排外主義的なデマ宣伝が繰り広げられた。それがSNS上でも拡散・拡大され、外国人を白眼視・犯罪者扱いする危険な世論が急速につくられていった。政府・与党、そして野党の一部もこの流れに乗っかり、選挙の主要な争点として「外国人対策」の強化が競い合うように叫ばれる異常な事態が現出した。
そうした状況のもと、在日中国人や中国人観光客を狙った襲撃事件が頻発している。
6月6日の夜、京都市下京区で中国人観光客が見知らぬ男に刃物で切り付けられる事件が起きた。犯人は逃走した。
7月30日午後10時頃、大阪府西成区で中国人観光客が強盗に襲われ首を絞められ負傷した。犯人は逮捕された。
翌日の7月31日午前9時頃、東京都千代田区で2人の中国人男性が4人の不明な男に武器で殴打され重傷を負った。犯人は逃走中である。
こうした事態をふまえ駐日中国大使館は、この間3度にわたって(7月31日、8月1日、18日)来日中国人観光客および在日同胞に対し「安全対策の強化」を呼びかけている。
襲撃事件があった7月31日の午後に出された呼びかけでは、「駐日中国大使館は直ちに負傷した同胞と連絡を取り慰問し、事件現場の管轄警察署を訪れ、日本側に直ちに措置を講じ、容疑者を逮捕し、犯人を厳罰に処すよう求めました。日本社会で最近排外的感情が一部高まっていることを受け、駐日中国大使館は外務省に対し厳重な抗議を申し入れ、在日中国人の安全と合法的権利を確実に保護するよう」に求めた。
また8月18日の呼びかけでは「最近、中国国民を対象にした襲撃事件が頻発しています。……来日観光客および在日同胞は安全意識を強化し、人混みや治安の悪い地域への立ち入りを避けてください。現地の法律・規則を遵守し、差別やトラブルに遭遇した場合は冷静に対応し、身体的な衝突を避け、人身安全を確保してください」と訴えている。
この呼びかけに示されるように、中国大使館は、頻発する襲撃事件と最近の日本社会における排外主義跋扈の状況とは無関係ではない、危険な事態だとの認識に立っているに違いない。翻って日本の人民はどうか。こうした事件が頻繁におきて中国大使館が危機感をもってそれに対応していることを知る人はほとんどいないであろう。いっぽうでマスメディアは中国でおきた日本人が巻き込まれた事件については逐一目立つように報道し、中国非難・攻撃のキャンペーンを展開している。
事は重大である。どんなに悪辣な誹謗中傷であろうとSNSも含め言論行動の枠内に収まってきた市井における中国(中国人)攻撃がはっきりと物理的な暴力として現われてきたといえるからだ。
日本の近現代史を振り返れば、中国、朝鮮をはじめとするアジア諸国人民に対する差別・排外主義の扇動はそれら諸国への侵略戦争・植民地支配とむすびついていた。関東大震災における朝鮮人、中国人虐殺も同様の構造で引き起こされた。現在まで一貫する在日朝鮮人に対する差別抑圧攻撃も基本的には朝鮮民主主義人民共和国に対する敵視・破壊・戦争政策を押し進める目的で続けられている。
いま国際帝国主義による中国包囲戦略の強化がはかられている状況で、日本においても中国(人)敵視の排外主義的攻撃はいっそうエスカレートしていきかねない。頻発する中国人襲撃はその予兆と見るべきではないか。
中国人への暴力を許さない闘いは、他民族へのあらゆる差別抑圧と闘うという日本の労働者階級の国際主義的任務であるとともに、日本を含む国際帝国主義の対中国戦争を阻止するためのもっとも緊要な闘いでもある。
【編集部】
(『思想運動』1116号 2025年9月1日号)
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