西日本で進む軍事基地強化の動き
反基地運動への弾圧に抗議する
岡本茂樹
(ふくおか戦争政権に反対し行動する実行委員会)
先の参院選で自公政権は衆院選に次いで少数与党となった。しかし、共産党、社民党など立憲政党は後退し、国民民主党や参政党など自公以上に危険な右派政党が伸長した。少数与党の自公政権は生き延び、台湾有事を日本の有事に結び付け中国を敵国視し日米安保体制・軍事同盟をより強化する路線の維持をはかるだろう。毎年繰り返される「戦争ジャーナリズム」は、アジア諸国で2000万人の命を奪い、都市と山野を破壊した日本の加害責任に触れずに日本人が受けた戦争被害で埋め尽くされた。これでは新たな戦争を阻止できない。
参院選後の西日本における戦争準備の強化は、息も切らせぬほど進んでいる。7月29日、防衛省は、敵基地攻撃能力(反撃能力)を担う国産の長距離ミサイルの最初の配備先について、陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市)とする方向で調整に入り、今年度中の配備を目指す、とマスコミが報じた。相手の射程距離圏外から艦艇や基地などを攻撃できるミサイルとして、政府は「12式地対艦誘導弾」の射程を1000キロに伸ばした能力向上型を運用する方針で、中国の沿岸部が射程圏内に入るようになる。さらに、来年度以降湯布院駐屯地(大分県)にも配備が予定され、勝連駐屯地(沖縄県)への将来的な配備も検討されている。これに対し8月4日、熊本市内の市民団体など約100人がミサイル配備計画の撤回を求めて抗議集会を行なった。普通に考えれば、中国は対抗手段として健軍駐屯地(湯布院も勝連も)を射程圏内とするミサイルを配備するであろう。こうした軍拡競争ではどちらの国の人民も不利益を被る、利益を得るのは戦争政権と軍需産業のみである。陸自西部方面隊総監鳥飼誠司陸将は「配備先は未定」「住民の懸念や負担は必ずある。丁寧に説明をしなければならない。もし配備ということになれば実効的に運用できる体制を構築しなければならない」と話した。かれは「国民に懸念や負担があろうと軍拡はやる」「説明はするが決めたことはやる」と居直っている。
7月9日、軍事化された佐賀空港に最初のオスプレイが飛来し、陸自佐賀駐屯地にはすでに17機が配備された。訓練が始まり、今後九州7県85か所を結ぶ危険な低空飛行訓練が予定されている。陸上幕僚監部は5日、米海兵隊との実動訓練「レゾリュート・ドラゴン25」を9月11~25日、沖縄を含む8都道県で実施すると発表した。日米から約1万4200人が参加し、もちろんオスプレイも参加する。
沖縄県では看過できない事態が進んでいる。8月4日、陸自石垣駐屯地内で女性教師が迷彩服を着用し訓練体験を行なっていたことが報じられた。8月5日、陸自宮古島駐屯地は、市内の公道を使用して戦闘服着用で徒歩防災訓練を行なった。この訓練の様子を確認していた市民に対し、駐屯地の司令が「許可を取ってこい、やめろ」と恫喝をした。また、昨年6月名護市安和桟橋前で起きた死傷事故で、抗議活動中に重傷を負った女性が、8月6日と8日の2回重過失致死容疑の「被疑者」として県警から事情聴取を受けた。これは、被害者を加害者、犯罪者とみなす暴挙である。さらに8月7日、辺野古新基地関連工事の監視活動をしていた作家の目取真俊氏宅に沖縄県警の家宅捜索が入り、パソコンやスマートフォンが押収された。容疑は、沖縄防衛局が設置したフェンスに手をかけ破損したというものだが、経年劣化し錆びたフェンスを放置していた防衛局こそ責任を問われるものだ。8月11日には、市民75人が沖縄県警に抗議の申し入れを行なった。市民の抗議活動に対する警察の弾圧に断固抗議する。(4〜5面参照)
経済に行き詰った支配層は戦争と排外主義に行き場を求める。軍隊と警察は軍事力と治安を両輪にして国民を戦争に動員する。わたしたちは、今こそ反戦・平和の旗を高く掲げ、人民的闘いを構築しよう。
(『思想運動』
1116号 2025年9月1日号)