JAL不当解雇撤回裁判の不当判決を糾弾する
「解雇自由の国」づくりを許すな!

東京高等裁判所は6月3日、一審の東京地方裁判所の判決に対し不服申したてを行なっていたJAL客室乗務員71名に対し、5日はパイロット70名に対し、一審の判決と同じく「解雇は有効」という「不当判決」を出した。「会社再生手続き中のための人員削減は必要であった。」というのである。それも開廷しテレビ撮影後一分も経たずして、大竹裁判長(客室裁判)、三輪裁判長(パイロット裁判)両裁判官は「棄却する」と述べ、原告や傍聴支援者らの「不当だ!」の声にもまったく反応せず、すぐに法廷を立ち去ったという。
3日、裁判が始まる2~3時間前から裁判所前には、300人以上の支援者が駆け付け集会を行ない、50席未満の傍聴券を求めて裁判の結果を待った。が、裁判が始まって10分もしないうちに「不当判決」という結果を知らされた。法廷に入らず支援者らと裁判所前で待っていた原告や、現役のCCU組合員らは「司法はどこを向いているのか!」と悔し涙を流し、怒りをあらわにした。2010年の大晦日に「解雇」を言い渡されてからこの日まで、歯を食いしばりながら闘ってきた原告一人ひとりの苦労を思うと、わたしたち支援者らも涙せずにはおれなかった。
「不当判決」の報告を受け、山口パイロット原告団団長は「東京高裁は安倍内閣の『世界で一番企業が活動しやすい国』『解雇自由の国』にする実行部隊に成り下がった!」と、怒りの声を上げた。その通りだ。JALの不当解雇がまかり通れば、経営者らは「偽装倒産」などを装って勝手気ままに労働者を解雇できるようになる。冗談じゃない!
5日も、やはり300人以上の支援者が東京裁判所前に詰めかけた。システム障害や欠航が相次ぐJAL、そしてパイロット不足がマスコミでも頻繁に取り上げられている昨今を反映してか、マスコミの撮影がいつになく多い。今度は5分もしないで「不当判決」という知らせだ。
パイロット判決の知らせを聞き、内田客室乗務員原告団長は「いま日航の安全運航が脅かされています。判決は、そんなJALのやり方の追認に加担して出されたものです。最高裁に上告して闘い続けます」と、力強く凛とした声を梅雨空に響かせた。原告、支援者全員の声でもある。
ところで、6月3日の朝刊『日本経済新聞』には「『稲盛イズム』日航に浸透」「一人ひとりが経営者」という見出しで、2010年前後から一万人以上もの社員や関連会社の労働者を「希望退職」という名で解雇し、安全を無視した運営で利益を上げていったにもかかわらず「利益が急回復」と、「不当判決」を予測したかのように報じていた。判決が出たあとの商業新聞には、労働者の権利や空の安全を問題にした報道は、見当たらなかった。
さて、これまで原告団は、全国各地・主要な駅・本社前などでの宣伝・抗議活動、裁判所や国会前などで座り込みを行ない、東京地方裁判所が出した「再生手続きの解雇だから特別」という「解雇容認」に対し反撃・追及してきた。また、全国から公正な裁判を求める署名も集め裁判所に提出してきた。にもかかわらず、今回の裁判は「棄却する」という回答だった。
今後、最高裁で闘うことになるが、いま一度これまでの闘い方を見直してみる必要があるのではないだろうか。中曽根らが、国鉄を分割民営化し闘う国労をつぶしたように、1980年代に国策としてやろうとしていたJALのCCU組合潰しを、いま仕切り直してやってきているのではないか。CCU加盟の客室乗務員が働く権利を獲得するため、若年定年制を廃棄するため、空の安全を守るためなどでストライキを実行すると、飛行機が本当に止まってしまったという。それほど影響力が強かった闘う組合であるCCUがターゲットだったということなのではないか。その闘いをさせないための解雇であり、財界の指導に基づく経営者の労務政策なのだということを再確認することから、次の闘いが始まるのではないか。職場にも現役の組合員がいるのだから、かれらとともに「経営者がゆっくり眠れない」闘い(ストライキなど)を、いまこそ組んでいく必要があるのではないか。
そして、わたしは、かれらだけを闘わせてはならないし、孤立させてはならないという覚悟で支援をしていかなくてはならないということを、強く思うのである。 【村上理恵子】

(『思想運動』938号2014年6月15日付)