戦争へ猛進する安倍政権
辺野古での海上作業を即刻止めろ!  
                

 新基地建設阻止という沖縄県民の意思が翁長沖縄県政を誕生させて二か月。自民党安倍政権は仲井真前知事とは打って変わった態度で、6度にわたって面会を求める知事を無視し続けている(大臣では沖縄担当相が会ったのみ)。沖縄振興予算を前年度比4.6%の161億円減、5年ぶりに減額した一方で、普天間基地の辺野古への「移設経費」(新基地建設費)を昨年度の倍、1736億円も計上し、大浦湾埋め立てへ作業を加速させてきている。

基地建設に猛進する安倍政権

 防衛省沖縄防衛局は1月10日朝から11日未明にかけ、キャンプシュワブのゲートから、大型トラックとコンクリートミキサー車十数台で資材を搬入させた。1月15日には浮桟橋を設置して海上保安庁のゴムボートを係留し、海上作業を再開した。その後も浮具や油膜防止膜、浮標灯を設置し、27日には大型クレーンの作業船と台船を繰り出して、巨大なコンクリートブロックを大浦湾に投げ入れた。これは油膜防止膜を海底で留めるアンカーに使うというが、数十トンものブロックがサンゴや藻場を破壊するのは必至である。沖縄防衛局は県に「岩礁破砕許可申請書」を提出すべきだが出さず、県が問い合わせても回答しないままだ。この「これまでで最大規模の海上作業」(1月28日『琉球新報』)は、翁長知事が前県政の辺野古埋立承認を検証する第三者委員会を設置し、かつ防衛局に建設作業中断を要請した翌日に、着手したのである。防衛局が県に提出済の『環境影響評価書』で日の出後1時間はジュゴンなどに配慮して作業しない、としたのも反故にして、早朝七時過ぎに作業を開始した。「粛々」とか冷淡とかより、法も手続きも滅茶苦茶である。現地では24時間体制でゲート前に座り込み、海ではカヌーや小型船で監視と抗議を続けているが、その後も資材搬入や巨大ブロックの投入が強行されている。今後、長さ約300メートル、幅17~25メートルという大規模な「仮設桟橋(岸壁)」工事を始めるが、これも公有水面埋立法や本体工事との関連など曖昧な点が多く、平和市民連絡会の北上田毅さんや超党派の議員が追及している。

警察・海保は謝罪し暴力をやめよ

 警察・機動隊による強制排除は年明けからより強化され、怪我人が増え、逮捕者も1人出た(すでに釈放されている)。
 海上で抗議する人たちに対しては海上保安官が、強く抑えつけて肋骨を骨折させたり顔を海水に漬けたり拷問まがいの暴力的排除を行なった。また女性カメラマンの肩に跨ってカメラを奪おうとしたり、カヌーに飛び乗り転覆させて人を海に放り出したり、バトルを取り上げ投げ捨てたり、沖合まで拘束して波が荒いのに置き去りにしたりと、ひじょうに危険な目に遭わせていることが地元紙で報道されている。
 これまで稲嶺名護市長や翁長知事、基地の県内移設に反対する県民会議や国会議員などが海上保安庁第11管区や本庁に過剰警備はやめろと抗議しているが、海保職員が暴力を振るったと認めない。辺野古への基地建設を許さない実行委員会で糸数慶子議員と取り組んだ申し入れでも開き直り、告訴されたら「正当性を主張する」と言い張った。安倍政権の基地建設強行は、戦争への前のめり姿勢とも重なっている。

基地建設を断固阻止しよう

 米『ネイション』紙の記者ジェレミー‐スケイヒル著『アメリカの卑劣な戦争』(邦訳は2014年10月、柏書房)は、米オバマ政権がブッシュの「世界の戦場化」、対テロ戦争を発展的に継承したことを詳述している。アフガニスタンでイラクで、パキスタンで、ソマリア、イエメン、ケニア、アフリカ、エチオピア、スーダンで、そしてジブチで、NSC・CIA・軍のそれぞれリストアップした者の暗殺が行なわれ、地域内の対立が煽られ、憎悪が増幅されている。世界各地に統合特殊作戦コマンドが先行部隊として配置され、CIAとともに親米政権や腐敗した軍閥を利用しつつ戦略をたて、情報管理し、他国の兵を訓練し、攻撃を指揮する秘密作戦を展開していく様を戦慄をもって読んだ。オバマ政権は、米本国の安全と天然資源や石油の強奪、軍産複合体の利権のため、CIAの準軍事部門を増強し、特殊作戦コマンドに自由裁量を認めて配備を拡大し、戦争の地ならしをさせている。イエメンとパキスタンでは低コストの無人機を使った「識別特性攻撃」で、誤爆や巻き添えの犠牲を増加させている。
 安倍政権がジブチの自衛隊基地を恒久化し、自衛隊派兵を恒久法として整備するのは、ソ連崩壊後のアメリカが、単独行動主義に陥る一方で緊迫財政にあえぎつつ、有志連合という国際協調の衣をまとって行なう、泥沼のような戦争の利害をともにすることだ。利は大資本が手にし、害は貧しい者、労働者階級にしわ寄せされる。オバマ政権は今後アジア・太平洋地域に重点をおく。辺野古に米海軍の大型艦船や強襲揚陸艦も接岸可能な軍港つきの恒久的な基地が建設されるのを止め、南西諸島への自衛隊強化を許さないことは、東アジアの平和に重大な意味をもつ。その闘いを沖縄や与那国・宮古の人たちにだけ背負わせてはならない。沖縄の闘いと呼応し、労働者・労働組合と市民運動が各地で協同し、政府に打撃を与える闘いをともに構築しよう。 【日向よう子】

(『思想運動』952号 2015年2月15日号)