「戦争法」の成立を阻止しよう!
5月3日に開かれたふたつの憲法集会
                   

 5月11日、自民、公明両党は、新たな安全保障法制に関する与党協議を開いて、安保関連法案の全条文に最終合意し、14日にも閣議決定を行ない国会に提出することを確認した。集団的自衛権行使を可能とするための自衛隊法、武力攻撃事態法の改悪、地球規模で米軍の戦闘などを支援できるようにする重要影響事態安全確保法案(周辺事態法の改悪)、海外派兵恒久法の新設(「国際平和支援法案」)などが法案の主な内容。これらの法律は、自衛隊が真の帝国主義軍隊として世界のあらゆる地域で米軍をはじめとする他国の軍隊とともに戦争を遂行できるようにする、文字通りの「戦争法」にほかならない。米議会の演説でのふざけきった「約束」のとおり、安倍たちはこの夏までの成立を目論んでいる。一方、憲法改悪の国民投票に向けた動きも急だ。自民党は来年の参院選後をにらんで「緊急事態条項」の新設など改憲条項の絞り込みを他党に呼びかけている。

横須賀の呉東弁護士が講演

 平和憲法が戦後最大の危機を迎える状況のなかで5月3日の憲法記念日がやってきた。快晴となったこの日、横浜・臨港パークでの憲法集会の前段に「壊憲NO!通すな!戦争参加法 IN横浜・学習講演会」が壊憲NO!96条改悪反対連絡会議の主催で開催された。会場となった横浜市市民活動支援センターは労組の活動家を中心とする参加者で一杯になった。
 主催者を代表して高橋俊次新社会党書記次長があいさつ。第1次・第2次安倍政権による教育基本法改悪、秘密保護法制定など一連の反動攻勢とひとつながりのものとして今次の戦争参加法、来夏以降の改憲国民投票が狙われていることが強調された。
 講演は、横須賀の「米空母母港化を考える会」共同代表の呉東正彦弁護士が「集団的自衛権と安保関連法」をテーマに行なった。呉東弁護士は、戦前において個人の尊厳と基本的人権の最大の侵害者は国家権力であったこと、人権がいかなる状況でも保障されるよう国家権力を縛る鎖、それが憲法であること、平和は人権保障の基本的条件であり、日本国憲法九条の平和主義の役割もそこにあることを再確認した。そして安倍政権が制定しようとしている安保関連法案は、①これまで否定されてきた武力行使(戦争行為)を集団的自衛権の名で可能とすること、②後方支援(補給・輸送)について周辺事態という地理的制約をなくそうとしていること、③平和維持活動(PKO)についても国連以外に拡大・武器使用場面も拡大しようとしていること、④従来の「イラク特措法」のような個別法、特別措置法がなくても世界のどこでも政権の判断で戦争参加できる法制が目指されていることが明らかにされた。さらに、今秋に予定されている米軍の新たな原子力空母(ロナルド・レーガン)の横須賀配備について、横須賀住民の同意も日本政府の安全審査もなく原子力艦船が居座り続けようとしていることに反対し、母港化の是非を問う住民投票を成功させる市民アクションをスタートさせていることが報告された。
 その後、厚木基地爆音防止規制同盟の大波修二さんが爆音訴訟の現状について、連絡会議共同代表でジャーナリストの山口正紀さんが安倍政権のマスコミ・情報操作について報告し、最後に共同代表の二瓶久勝さんが今後の闘いの構えについて提起した。憲法も労働法制も、戦後最大の危機を迎えている。断固批判し、闘うべき労働組合・メディアが起ちあがっていない。労働組合と学生が闘ってこそ社会変革ができる。今こそ「労働組合ここにあり」を社会に示そう、との力強い訴えと、6月23日の「戦争への道をゆるさない6・23東京集会」への結集の呼びかけがあった。
 学習講演会終了後、参加者はノボリ旗を先頭に、隊列を組んで憲法集会の会場へ移動した。

共同の力で3万人の大結集!

 会場の臨港パークでは、すでにプレコンサートがはじまっていたが、参加者はまだ続々と詰めかけていた。労組の旗を掲げての参集が目立つ。例年の憲法集会には参加していなかった「平和フォーラム」に結集している労組の旗も数多くあって、自治労と自治労連、日教組と全教というように、ナショナルセンターを異にする組合が一同に会する光景は壮観であった。参加者は3万人、昨年までの日比谷公会堂集会の10倍の規模の大結集である。差し迫る憲法改悪への強い危機意識と幅広い共同行動の実現がこの大結集に結びついたのであろう。
 集会で登壇した呼びかけ人や政党代表のスピーチからも、安倍の壊憲のたくらみに共同で反対しようとの思いが伝わった。リレートークでは、「戦争・原発・貧困・差別」といったさまざまな分野で活動している人々が登壇、高校生をはじめ若い人々の積極的な発言が目立った。
 沖縄の運動を代表して発言した高里鈴代さんは、知事と会談し沖縄県民がどれだけ強く辺野古の基地建設に反対しているかを知っていながら、米国に行って恥知らずにも「辺野古移設が唯一の解決先だ」と公言した安倍を強く糾弾し、「辺野古の基地建設は沖縄県民の民意を無視しているということだけではない。それは平和憲法を、憲法9条を危うくするものにほかならない。全国民の力で基地建設を跳ね返していこう」と力強く訴えた。

6・23東京集会に結集しよう!

 幅広い結集で大きな成功を収めた憲法集会ではあったが、参加者の大半を占め、この大結集を支えた労働組合からの発言が一つもなかったことには大きな疑問を覚えた。さらには、多様な分野からの発言で安倍政権の攻撃の個々の現われを知ることはできたが、それらを貫く攻撃の本質に迫る状況把握と闘いの基本的方向の提起は集会全体を通して弱かったと言わざるを得ない。
 前段集会を開催した96条改悪反対連絡会議は、改憲反対の広範な共同闘争の実現を希求しつつ、その中での労働者・労働組合のイニシアティブの発揮を一貫して主張してきた。昨年秋の「10・17戦争への道を許さない東京集会」の実現を支え、本年2月には「戦争させない!2・25学習決起集会」を成功させた(本紙3月15日号参照)。こうした蓄積をもとに「戦争法」の国会審議が大詰めを迎える6月、この法律の成立を何としても阻止すべく「戦争への道をゆるさない6・23東京集会」(別掲案内参照)を日比谷野外音楽堂で開催し、より大規模な結集をめざす。多くの仲間の参加を呼びかけます。 【大山 歩】

(『思想運動』958号、2015年5月15日号)