対独戦争勝利70周年にあたって
消し去ることのできない歴史の真実
                    

 世界の人民が日独伊ファシズムと戦い勝利を収めてから70年目にあたる2015年、本紙は、第二次世界大戦の基本的性格について、これまで繰り返し主張してきた立場を重ねて表明する。
 第二次世界大戦は、第一次世界大戦と同様、帝国主義列強間の植民地再分割戦争として始まったとはいえ、社会主義ソ連の対独戦争が先導し、植民地被抑圧諸民族の解放闘争がこれに合流し、さらにこうした趨勢に促された米英帝国主義の参戦が、帝国主義列強間の植民地再分割戦争を反ファシズム民主主義擁護の戦争へと、戦争の性格を変化させ、発展させた。戦争を勝利に導く主役を演じたのは、米英帝国主義ではなく社会主義ソ連であり、独立を求めて起ち上がった被抑圧諸民族であった。
 5月9日、対独戦争勝利70周年を記念する祝賀行事が、中国の習近平国家主席、キューバのラウル・カストロ国家評議会議長、朝鮮民主主義人民共和国の金永南最高人民会議常任委員長らが列席して、モスクワの赤の広場で挙行された。
 西側帝国主義陣営の頭目どもは、日本の安倍首相を含めて、ウクライナ問題へのロシアの〝介入〞を口実に祝賀行事への参列をボイコットした。そこには、第二次世界大戦後に形づくられた世界秩序を擁護する労働者人民の立場と、この世界秩序を否定・破壊してきた西側帝国主義陣営との対立が影を落としていた。
 ヨーロッパでは、第二次世界大戦の開戦70周年にあたる2009年以来、欧州連合(EU)や欧州評議会を舞台に、社会主義とファシズム、スターリンとヒトラーを〝全体主義〞の名のもとに同列視するキャンペーンが推進されてきた。社会主義体制が解体させられた東欧諸国では、共産主義のシンボルの使用禁止、共産党の非合法化が強行された。これと同じ攻撃は、いま、西側帝国主義によるEUとNATOの東方拡大(市場と軍事両面での支配領域の拡大)の主戦場となっているウクライナの現政権に引き継がれている(本紙前号、957号参照)。
 ねらいは何か。ヨーロッパのファシズム支配からの解放の立役者となった社会主義ソ連の決定的貢献を消し去るか、希釈することにある。列強諸国は、ナチスに対して一貫して宥和的態度をとり、ナチスの野望に事実上手を貸した(たとえば、1938年9月の米英独伊ミュンヘン協定によるチェコ・ズデーデン地方のドイツへの割譲)。第二次世界大戦が始まると、英仏両国はドイツに対して宣戦布告したもののドイツとの戦闘を回避し、ドイツが社会主義ソ連を滅亡させる可能性への期待から待機姿勢をとった(これは「奇妙な戦争」と呼ばれた)。独ソ戦は1941年6月に独軍がソ連領に侵攻し戦端が開かれた。ソ連軍(赤軍)は緒戦での敗退を経て戦線を立て直し、やがて攻勢に転じ、以降、米英を主力とする連合軍のノルマンディー上陸作戦の開始(1944年6月)までの丸3年間、独軍との独力での戦闘を余儀なくされ、軍民あわせて2000万人の人命を失った。社会主義とファシズムを同列視するキャンペーンは、ファシズムに微温的態度をとった帝国主義者の責任回避、問題のすり替えにほかならない。
 ファシズムは危機に瀕した資本主義の胎内から生まれた。資本主義が存続するかぎり、ファシズムへの衝動は、つねに資本主義と背中あわせの関係にある。現に帝国主義は、みずからの支配を維持し強化するためなら、あらゆる反人民勢力と結びつき、利用することをためらわない。2014年2月、ウクライナのヤヌコビッチ大統領を追放したクーデターでは、第二次世界大戦中にナチスと連携して赤軍と戦ったファシスト集団の末まつ裔えい、ネオナチ諸党の連合体である「右派セクター」が重要な役割を演じた。かれらはいま、ポロシェンコ政権の一角を占めている。
 類似例はほかにもある。混迷を深める中東情勢をいっそう複雑化しているように見えるイスラム国(IS)は、CIAのれっきとした手先だということが、いまや明るみに出されつつある。
 ことは地球の裏側で起きている一過性の出来事ではない。ヨーロッパで極右勢力が台頭しつつあるように、わが日本の地でも、2012年12月、「戦後レジームからの脱却」をたくらむ第二次安倍極右政権が発足した。人民の膏血を絞り戦争を挑発する以外生き延びることができなくなった、それは帝国主義段階の資本主義の最期のあがきなのである。 【山下勇男】

(『思想運動』958号 2015年5月15日号)