朝鮮学校無償化除外から6年
共にたたかう決意新たに
                       

 2013年2月20日に行なわれた文科省の省令改悪(朝鮮学校を無償化の対象から外すために行なわれた根拠規定「規定ハ」の削除)から3年、毎年2月は20日をメルクマールとして朝鮮学校の無償化除外反対の全国行動が取り組まれてきた。今年も19日㈮に文科省要請行動、そして金曜行動(毎週金曜日に、東京では文科省前で行なわれている無償化除外反対の行動)、翌20日㈯には東京集会が開かれた。
 19日の要請行動には、裁判闘争をたたかう原告の朝鮮高級学校生、朝鮮大学校生、オモニたち、全国各地から無償化の運動に取り組む代表者など50人が入った。要請の最中、朝高生のひとりが涙を流した。かれの口からはいま自分とそして家族、友人、同胞たちがとても息苦しい生活をしていること、差別される苦しさ、悔しさがあふれて出た。
 6年目を迎えた高校無償化除外のたたかいは、今年いっそう厳しさを増して、朝鮮学校生たちの身に降りかかっている。そこにはかれらの祖国である朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)に対する、米韓の戦争挑発の動きが、激化していることへの不安と恐怖が根底にある。
 これまでも拉致問題や核、人工衛星を「事実上の弾道ミサイル」と喧伝する日本の報道によって、朝鮮学校を標的とした実際的な暴力はくり返し行なわれてきた。女子学生のチマチョゴリが切り裂かれ、学校への脅迫電話は頻繁になり、初級学校(日本では小学校にあたる)への右翼の襲撃もあった。朝鮮学校をはじめとする在日朝鮮人社会に対する日本社会の接し方は、すでに異常としか言えない状況にある。日本政府のいう「政治・外交と教育は別の問題」などという建前はそもそも崩されていて、朝鮮学校に対する弾圧・攻撃は、あからさまに行なわれてきたというのが実態ではないか。それを何より助長・奨励しているのが日本政府であり、その意向を宣伝・流布しているマスメディアの責任は大きい。
 無償化除外反対の運動のなかで、これまでも「なぜ在日朝鮮人として学び、生きる権利が保障されないのか」という朝高生たちの素朴な疑問が、絶えず日本政府に対して投げかけられてきた。わたしは無償化の運動を通じて、かれらのそのような投げかけが日本社会のあり方の本質を問うものであることを教えられた。なぜ日本は植民地支配を行ない、朝鮮人民を連れ去り、強制労働を強いたのか。なぜ日本政府は日本軍「性奴隷」制度の被害者たちに誠心誠意謝罪し、反省し、法的責任を果たすことをしないのか、といった問題も根のところではつながっている。
 今回の要請でも「あなた方(文科省)は在日朝鮮人をどう見ているのか」という問いが、朝高生から投げかけられた。文科省の若い役人2人は、それに対して「わからない」「答えられない」と答えた。もちろん、それは文科省として答えづらいものだから、そう答えたのかもしれない。しかし同時に、この答えは日本社会の大多数の人の答えでもあるだろう。
 「戦後70年、平和だった日本」という時、そこには在日朝鮮人はもちろん、そして沖縄の人民もまた抜け落ちてしまっている。労働者・人民の権利を求めたたたかいと、その成果もまた、丸く収められて、なんの波風もたっていなかったかのような無風状態の「平和国家・日本の70年間」が連想させられる。しかし在日朝鮮人の人びとは、阪神教育闘争をはじめ、各種の権利を獲得するために、戦後70年のあいだも、そしていまもたたかいを続けている。そのことを「知らない」では済ませられない。
 朝鮮半島の緊張状態もまた、無関心ではいられない。戦争法案に反対した13万人の人びとは、朝鮮半島での戦争策動に対しても、共に反対しよう。日本の軍事強化の口実として「朝鮮の脅威」が語られているのなら、なおさら米韓の軍事演習による米韓と朝鮮の関係悪化は、戦争法が「必要」だという論に足元をすくわれてしまう。米韓による朝鮮政府転覆を想定した軍事演習は、「斬首作戦」という名前の残虐さからもわかるように、朝鮮の人びとを恐怖させ、態度を硬化させることになる。対話による解決をこそ、日本政府、米政府、韓国政府、そして朝鮮政府に求めよう。東京で行なわれている無償化裁判は、3月2日㈬第九回の口頭弁論を終えた。今回国側から任意開示書面として出された資料の中には、2012年12月26日の第二次安倍政権発足後、2日後の28日に行なわれた閣僚懇談会で、朝鮮学校を無償化からはずす旨、文部科学大臣、拉致問題担当大臣、安倍首相の3人が打ち合わせ、合意していることが示された資料がある。12月28日から翌年の1月26日まで行なわれたパブリックコメントや審議会の結果を待たずに合意していた事実を裏づける資料は、これまでの国の主張の嘘を暴く新たな証拠になる。
 次回期日は、5月25日㈬11時~。東京地裁103号法廷。
 いっそうの支援・裁判傍聴をよびかける。 【廣野茅乃】

(『思想運動』976号 2016年3月15日号)