国際婦人デー東京集会開く
―― 戦争反対! 壊憲阻止! 女性の力で平和を築こう!
〈集会ルポ〉 たたかいの報告と歌がひびき合った3時間
戦争動員体制との闘いへ、熱意新たに                
                     
 2016年の国際婦人デー東京集会は、3月5日、文京区男女平等センターにおいて「戦争反対 壊憲阻止 女性の力で平和を築こう!」を共通テーマとして開催された。当日の会場を飾った、大衆運動を基調とした華やかなデコレーションにも集会実行委の力が発揮されていた。初めて参加する方も含め、例年よりも多くの人びとの参集を得て、盛大に国際婦人デーを祝うことができた。
 倉田智恵子実行委員の基調報告「進行する総動員体制と女性のたたかい」は、安倍政権のもとで展開されている戦争政策と婦人労働者が置かれている現状について、複雑な情勢をコンパクトにまとめ上げた好報告であった。歌や闘いの報告とも響きあい、闘いへの熱意が盛りあがった3時間であった。

基調報告について

 報告は、安倍政権がつくり出そうとしている戦争体制が、日露戦争以来の侵略戦争の歴史を継続していることを示している。女性たちが戦争に駆り出され、戦争を支えた歴史を直視し、その再現を許さない姿勢が明確である。種子島宇宙センターから打ち上げられる日本のロケットと同じものが、朝鮮民主主義人民共和国から打ち上げられると「人工衛星と称する事実上の長距離弾道ミサイル」となり、それを口実として防衛省は、「迎撃ミサイル」の配備に走る。朝鮮に核攻撃を仕掛けているのは、帝国主義段階にある日米韓の軍事同盟である。マスメディアの報道によって、帝国主義の核戦略に関する報道がネグレクトされた結果、日本の排外主義・ナショナリズムの風潮が加速した。この現状への明確な批判にもとづく運動の必要性がわかりやすく説かれた。
 昨年末の「慰安婦」問題をめぐる日韓「合意」は、まさに天皇制が戦争責任をとってこなかった戦後の歴史問題を浮き彫りにした。日本帝国主義の侵略戦争の蛮行を無かったことにし、日米韓同盟の利益追求のために生み出された「合意」が鋭く批判された。婦人労働者の貧困の問題では、「非正規労働者が4割を超えるということ事態が資本主義の危機である」と核心を突く。その結果がシングルマザーの貧困となり、日本の子供の6人に1人は貧困状態で、なかでも沖縄では3人に1人が貧困に陥っている。この4月から施行される「女性活躍推進法」は、女性の管理職をふやす大企業を優遇し、女性労働者の一層の戦力化、二極化を進める施策である。もうひとつは、外国人労働者の活用である。外国人家事支援法の導入の推進が目論まれている。この制度は、介護保険の改悪とつながっている。介護の現場に外国人労働者を導入する政策である。もし国内外の労働者の連帯がなければ、米共和党の大統領候補トランプが、中南米からの移民労働者をターゲットとして、「白人の低賃金労働者」の支持を当てにして排外主義をばらまいている米の政治状況が、日本にも現出するだろう。労働者意識の覚醒と連帯が重要である。
 労働者への搾取・収奪をどこまでも追求する資本は、他方では、戦争と戦争準備による儲けの増大を求めて軍事国家づくりに狂奔している。戦争は女性労働者には、災悪だけをもたらす。支配階級が資本主義の延命のために行なう戦争には加担できない。倉田報告は、「資本主義のシステムそのものを変える展望をもち、広範な女性たちとしっかりとした運動と取り組みを進めていきましょう」という言葉で締めくくられた。

たたかいの歌

 「闘いのなかで生まれた歌――今立ち向かうために」と題して、混声合唱団が6曲を歌いあげた。「三・一独立運動」に参加したホンナンパが作曲、キムヒョジュンが詩をつけた「鳳仙花」。ジェス‐サンチャゴ作詞・作曲「ハリーナ」は、マルコス独裁時代に進出した日本企業で働き、ストに参加して殺害された少女を歌っている。「ふるさと」(作詞石川逸子・作曲市野宗彦)は、「慰安婦」にされた少女が、故郷を目の前にして入水自殺をした悲劇を歌ったものである。「時はこまぎれ」韓国労働者の「石ころの歌」など労働者の労働と闘いの歌が次々に歌われた。
 歌は、積み重ねられた鍛錬を感じる芸術性の高いものだった。選曲の良さが光った。抑圧されたおれていった人びとを胸に刻み、闘いつづけようという詩が、美しい旋律とともにしみわたってくる。その感動は、いま現在のわたしたちの状況にひきつけられ、わたしたち自身の闘いの熱意になる。こうした文化的・芸術的企画に今後も期待したい。

闘いの報告

 VAWW‐RAC(「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクションセンター)の井桁碧さんが、日本軍「慰安婦」問題の日韓「合意」と、安倍首相の「お詫び」のいい加減さを徹底的に追及した。謝罪とは、過ちを認めた上でするものであり、日本政府が繰り返してきたものは謝罪とは言えない。みせかけのお詫びと裏腹に、日本大使館前に立てられた平和の碑(日本では「慰安婦像」と呼ばれる)の撤去を韓国政府に求めた恫喝。「合意」は、「被害者を再び苦境に追いやる所業」という被害者の痛烈な批判を深く理解するための貴重な報告であった。さらに、その被害者たちの「ナビ基金」の設立による現在の戦時性暴力問題のとりくみが紹介された。想像を絶する暴力のなかから再び立ち上がり反戦・人権問題にとりくむ彼女らはまさに「歴史の変革者」であるという井桁さんの言葉に深く共鳴した。
 在日韓国民主女性会の申久江さんが、朝鮮半島の平和と在日コリアン(朝鮮半島をルーツとする在日韓国人・朝鮮人)の人権というテーマで、歴史的・国際的に広く深い視野に立った報告を行なった。在日コリアンの存在は、日本帝国主義の侵略戦争により朝鮮半島が植民地化され、生活を破壊されたことに根本原因があること、在日への差別は、日本政府が戦争責任をあいまいにし、公的な謝罪と責任を果たしていないからであるという、わたしたちが何度でも確認すべき根本問題が明確に提起された。さらに、米韓日の朝鮮敵視政策への批判が説得力ある論理で話され、朝鮮半島の平和的な統一、日本・アジアの平和を求め連帯することが力強く呼びかけられた。
 沖縄反基地運動については、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの外間三枝子さんから報告を受けた。辺野古新基地建設を強引に推進する安倍政権が、3月4日に表明した「福岡高裁那覇支部の和解案受け入れ」について、あれは和解でもなんでもない、政府は辺野古が唯一の解決策という主張を変えておらず、辺野古の運動もまったく浮足立っていないと、これまでの運動経験に根差した冷静な見解が明言された。辺野古現地での山城博治さんの「撤回まで頑張る」との言葉も紹介された。さらに、沖縄の歌や踊りを尊ぶ文化を、「武」を尊ぶヤマトと比較して紹介した。それが現在の沖縄の運動を強く豊かなものにしている要因のひとつと思われた。また、憲法や安保問題にとりくむなら、なぜもっと沖縄のことにとりくまないのかと、いま戦争法廃止にとりくむ多くの人びとと共有すべき課題を鋭く提起した。
 全労協全国一般東京労組・フジビグループ分会の中原純子さんが、破産法を悪用した偽装倒産・全員解雇と「組合つぶし」を強行した富士美術印刷・田中一族との3年半余の闘いについて報告した。正社員・非正規労働者が共にたたかう労働組合の、労働者からの搾取によってこえ太り労働運動に非道なスラップ(恫喝)裁判を仕掛ける資本との闘いは、非常に厳しい。が、多くの仲間とともに労働者の誇りをもって闘っている中原さんの言葉は、逆にわたしたちを励ます力をもって響いた。1988年総評時代に中小企業の労組分会として出発したフジビ労組の歴史など興味深い話を聞くことができた。
 アピールは、JAL不当解雇撤回争議団の鈴木圭子さんと壊憲NO!96条改悪反対連絡会議から。デモ行進は、礫川公園まで。14年・15年のデモに比べ、公安の姿がなかった。このことが何を意味するのか。集会で提起されたさまざまな闘いと連帯して、帝国主義戦争阻止のために最後まで闘おう! 【阪上みつ子】

(『思想運動』976号 2016年3月15日号)